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SAKURAJIMA INTERVIEW
―― 長渕さん、2年前、横浜スタジアムで桜島オールナイトライブを発表されてから、本番まで、どんな感じで迎えられたわけですか?

長渕:2年前に照準を定めて、そこからはもうまっしぐら。一人じゃできない事だから、周りのみんなの協力を固めながら。このライブをやるための精神性、お客さんに来てもらうための方法論、そういう部分に全ての神経を使った。何も無いところにステージを作る、約束の“聖地”を作り上げるということに、ちゃんと心を込めていかない以上、人は動かない。実際、なかなか最初は動かなかったし、動こうとする人は少なかった。どこかから「そんなイベントができるものか」という声も聞こえてきたりしたけど、僕は「出来る」って事で前に進めた。そのために、自らいろんな人に会って、ひとつずつ話を積み上げていくことから始めた。そういう部分がいちばんしんどかったかもわからない。けど、それはあたりまえの事だから。

―― 桜島に向けてはスタッフも結構変わりました。これまでの人間関係とは違うチャンネルで、桜島に向けたスタッフを構築し直そうという気持ちもありましたか。

長渕:あった。いちばんは、シンプルに、自分から志願して桜島のプロジェクトに参加して、「俺も何かをやりたい」「一員としてやりたい」という意識でいる人間をセレクトしてほしいと僕は主要スタッフに言い続けてきたし、結果的に素晴らしい人が集まったね。

―― “スイッチ・オン”の状態になったのはリハーサルに入ってからですか。

長渕:まあ、ずっとスイッチ・オンだった(笑)。リハーサルに入るまでは、とにかく肉体を追い込んだ。トレーニング自体は、7年くらいずっとやってきたんだけど、ライブが近づくにつれて、コンサートに照準を合わせたトレーニングに入って行って。そのトレーニングによって、僕の中でひじょうに大きな自信がついてきていた。「果たしてどれだけの効果があるか」ということでは、不安もあったけど、途中から体も変わってきて、持久力もついてきて、「これはいける」と。肉体が出来てくれば精神もついてくるから。でも、そこに至るまで、“肉体を作り上げる”というのが結構つらかったね。

―― 演奏の方は、あまり心配してなかったですか。

長渕:いやあ、演奏はメチャクチャ心配してた。本番までの約2ヶ月前から、ほとんど毎日リハーサルをやって。今思えば、そんなにリハが必要だったのかなということも思うんだけど、でも、ひとがやらないような事をやるわけだから。まず120曲をセレクトした。120曲というのは、それを全部やるというより、デビューから27年間のアルバムをひも解いていくと、やっぱり「この歌をうたいたい」というのがいろいろとあった。その中から、いろんな人たちの意見を聞きながらセレクトしたのが120曲だった。で、それをステージ用にアレンジしていくわけだから、僕もきつかったけど、バンドの連中が精神的にも肉体的にもきつかったと思います。

―― リハーサルの初日を見せてもらって、スタジオで歌う長渕さんには観客が見えてる。でも、バンドの人たちには、当然のことながら、まだ観客は見えていない。そういうズレがあるように思えました。

長渕:そのズレは埋まらないね。さびしいことだけど、しょってるものが違うから、それを求めてもダメだね。これはどうしようもない。僕がしょってる責任の重さと、彼らの責任の重さとは、はなから違う。そういう、課せられた重量感の違いがあるから、当然温度差も違う。でも、目的意識を持って、同じ頂点を目指すわけだから、「本気でやってくれ」って事は再三言い言い続けたし、バンドのメンバーは肉体を動かしてそれを表明するしかない。そういう部分の精神性――スタッフもそうですけど、まずはバンドと僕とがひとつになれるかという戦いがあるわけで、それはもう吐き気がするくらいきつかった(笑)。感謝してるのは、宮畑会長(トレーニングセンターサンプレイ会長)が、週に1回くらい、バンドのメンバーがスタジオに入る1時間ほど前に来てくれて、みんなに、ストレッチから始まって軽い運動をやってくれて。そこから雰囲気が変わったね。バンドの連中も会長が来て体をほぐしてくれるわけだから、やらざるを得ない。で、そういう運動をやっていくうちに、肉体もほぐれていって、意識をひとつにするという気持ちに到達できた。それはある意味、宮畑会長が来てくれたからで、ぼくは涙が出るほど感謝してる。

―― で、本番前、数日前から桜島に乗り込んで。

長渕:一週間前に乗り込んだ。

―― スタジオの密閉された空間から、実際の会場に移ると、バンドのみなさんも本番を実感しないわけにはいかない。

長渕:桜島の会場を見て、メンバーはビックリしてたね。ただ、厳しい事を言えば、「本番で一生懸命歌えばいい」とか「本番でアクティブなパフォーマンスをすればいい」という考え方は、僕は嫌いなんだ。本番だけ頑張ればいいということでは一体感は生まれない。でも、コンサートが全部終わって、朝を迎えた時、バンドのみんなと一人ずつ握手をして、全員が僕に「ありがとう」って言ってくれた。それは嬉しかったね。それで僕は救われた(笑)。

―― 長渕さんは、リハーサルのときから、7万5千人という観客の数はイメージしていたと思いますが、イメージと、実際にステージ立った時の観客の多さは違いましたか。

長渕:全然違う。ステージの大きさ、人の多さもさることながら、いちばん心に来たのは、最前列の席の客から、僕が見えないくらいの後ろの席の客まで、「一体になろう」という意識でひとつになってたこと。みんなの連帯意識がすごかった。船や電車や飛行機で長旅をしてきて、昼間の太陽に焼かれて、やっと本番が始まって、次の朝までほとんど寝ないわけで。そういう中で、客席にいる全員、連帯感を作ろうという意識でいてくれたことに関して、僕はほんとに感謝してる。「素晴らしい」って、僕はコンサートで言ったと思うけど、みんなの心、気持ちが「素晴らしい」、「美しい」っていう感じだった。会場全体がひとつの生き物のような感じだったね。みんなの中から「長渕剛のオールナイトコンサートを成功させなきゃいけない」という思いが伝わってきたのが、僕は涙が出るほど嬉しかったし、泣いたよ。ボランティアの人たちも、ゴミの収集から何からいろんなことをやってくれて、非常に疲れたと思う。苦しい何日間だったと思うけど、でも、「達成感があった」というメールがいっぱい届いた。“よっしゃあ! やったなあ! よく頑張ったなあ!”という、自己をほめてあげたい気持ちが湧き上がってきたはず。「コンサートに参加して、“このコンサートを俺たちが成功させるんだ”という意識で動けた事が、生涯忘れられない思い出になる」というようなメールももらった。労働の喜びというか、ある目的に向かって大勢の人間たちがそれを成功させようと動く、そういうことも含めて、本当に美しい一夜だった。

(ファンクラブ会報より一部抜粋)
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