9/23、故郷・鹿児島の熱狂を乗せ、10トントラックは、16台の隊列を組みながら、ひたすら小倉を目指した。奇しくも日本国を変えようと、ひたすら走り続けた薩摩の侍たちと同じ道のりだ。
赤々と燃え上がった鉄の塊のように、長渕の熱情が、意志が宿り煮えたぎった機材達を乗せ、16人のスタッフが運んで行く。ただの機材では無い、細心の注意をしながら、熱い想いで長渕剛の心を運んでいるのだ。
まだ300キロ。
9/24、次の大阪へ向け、600キロを一気に駆け抜ける。
9/25、鹿児島から920キロ、東京ドームが20個も入る巨大な大阪港にある南港トラックターミナルに、遂にたどり着く。闘いが始まるまでの束の間の休息。一方、大阪で最高のRockショーをする為、長渕はギリギリまで、その肉体を精神を、新極真の朋友新保智と練り上げる。
9/27、LIVE前日、息を止めていたかのような器材に、長渕剛の血流が注ぎ込まれる。入念なリハーサルとその場で沸き上がってくるインスピレーション。会場とオーディエンスが創る空気の中で次々と変化し、うねる感情、日常から引き剥がされる心。ギリギリの危うさを創りあげるRockショー、そこからしか生まれない純粋性。予定調和が無いステージ、瞬時に動くスタッフ、獣のようにギラついた目でステージを見つめ、長渕を見つめる。このセンターステージではスタッフさえも主役の一人だ、他のどのアーティストにも出来ない演出。それが長渕剛のLIVEなのだ。
さぁ、いよいよ大阪の幕は切って落とされた。12000人の熱き剛コールそして突き上げられる拳、拳、拳。天を衝く絶叫、心がうち震える。長渕の最高の笑顔がビジョンに映し出される。
それは今日、この時、この瞬間を約束する。
♪Come on Stand up!〜 長渕の唄が、あっと言う間に、心の奥底に突き刺さってくる。自分を信じる事さえ疲れはててしまった時代だと、だけど立ち上がれと。ピントの合わない自分の網膜を横っ面を叩くようなビートが正気にする。
懐かしいLOVEバラードは長渕と12000人の大合唱となり優しさが会場を包み込む。
この会場に集まったすべての人間に突き付けられる存在証明のように、いつかの少年は真実を求めた。喩えようもない一体感が長渕を突き動かす。
『電車が無くなっても知らねぇぞ!』
次々と予定外の曲を唄って行く。
長渕の研ぎ澄まされた五感が、超絶した声をステップを躍動を創りあげていく。そして、3時間以上もトップギアで走り続け、レッドゾーンを振り切って行く。
トリプルアンコールは、『神風特攻隊』だ。
長渕の絶叫。間奏には、長渕の心が叫ぶ、戦争の無意味さを、人が人を殺し合う無意味さを、命の尊さを、バンドが銃弾の雨を降らせ、照明は、真っ赤に染まる。忘れてはいけない言葉がある。政治家でも何でもない、ただの音楽家がやらなければならない事。目を背けてはならない真実、人は真実を突き付けられると言葉を失う、しかし長渕剛は、それでも「神風」をオーディエンスと共有した。そう、長渕剛じゃなければやろうとしないだろう。いや、出来ないのだ。真実に目を背ける事は楽であり、眼前に対峙することは辛く厳しい事だ。 |